B L A S T

「あの男はその野望のためにBLASTを裏切りやがった」


すると突然、それまで黙っていたカズが声を荒げた。


「あんなに毛嫌いしてやがったのに"風神"に乗りかえたのはトップの座を譲り受けるっつーセイジの野郎の甘い誘いにのったからに違いねえ。あの男はオレらを裏切ったんだよ」


――セイジ。


切れ長の目が脳裏を過ぎる。

今は"風神"の副総長だが、以前はトップだったということを初めて知った。

ガヤにトップの座を譲るなんてなにか裏でもあるのだろうかと思ってしまうあたしはやっぱりセイジのことを信用できていない。


「どいつもこいつもてめえのことばかり考えやがってふざけんなっつー話だ」

「おい、カズ」

「あの男もジュンもくそだ。少しはイツキの気持ち汲んでやれねえのかよ」

「カズ、落ち着け」


興奮気味に話すカズを、タクマが慌ててなだめた。

我に返ったカズは落ち着きを取り戻すように煙草の煙を吐き出した。

目から鱗とはこのことを言うのだろうか。

自己中心だと思っていたのにイツキのために怒りをあらわにするカズは、意外とチームのことを考えているのかもしれない。
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