B L A S T

ぎょっとした。

その事件は聞いたことがあったからだ。

一年前にニュースでよく取り上げられた記憶がある。

確か夏の季節だったと思う。

暴走族のあるチームがメンバーだった一人の少年を集団でリンチするという事件があった。

それが「集団リンチ殺人未遂事件」。

公園で少年が倒れているのを通りがかりの人が見つけ、発見が早かったおかげで命は取りとめたという。

警察が捜査したところ暴走族が絡んでいると知り、当時被害者が入っていたチームのリーダーと暴行に加わった複数の男が逮捕された。

主犯格はリーダー。

被害者の少年がチームを抜けると言ったがために、事件は起きた。

しかも被害者の少年がチームに所属していた期間はたったの三ヶ月。

非情極まりない。


「…あの事件がなにか?」


楓は嫌な予感がしていた。

手に汗を握る。


「その被害者が、井原純平。その写真に写ってるジュンのことなんだ」


えっ、と思わず写真に目をやった。


「この人が…」


楓は絶句する。

幸せそうに笑っているこの人があの事件の被害者だとは。

運命はなんて残酷なのだろうと悲しくなった。
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