B L A S T

「でもジュンにとってそれは重荷だったらしくてよ。突然WAVEに入るって聞かなかった。もちろんオレらや藤ヶ谷は反対したよ。あのチームは万引きや窃盗は当たり前で昔から評判悪かったからな。けどイツキだけは反対しなかったんだ。当然イツキが一番許さねえだろうと思ってたオレらは驚いたよ。結局ジュンはオレらの話も聞かずにWAVEに入った。イツキと藤ヶ谷の仲がぎくしゃくし始めたのはその頃からだ。

それで―――」


間が空いた。

いつの間にかBGMは消え、やけに店内が静かに感じる。


「…それで、三ヶ月が立ってあの事件が起きちまった」


タクマは目を伏せて呟いた。


「藤ヶ谷がイツキを責めたよ。どうしてジュンを止めなかったんだって。ジュンはイツキの言うことには絶対的に従ってたからな。イツキは何も答えなかった。それから数日したあとだっけな。藤ヶ谷がBLASTを抜けたのは」

「それじゃあ二人の仲が悪いのは…」

「ああ、ジュンがきっかけなんだ」


これでやっと辻褄があった。

まさかあの事件の被害者が絡んでいるとは思ってもいなかった楓はどうしていいか分からず、静かにうつむいた。

タクマが腕を組んで、隣に目をやる。


「まあここに一人、藤ヶ谷が"風神"に乗りかえたのはそれだけじゃないと思っているやつがいるみてえだけど」

「当たり前だろうが。欲深けえあの男のことだ。絶対トップの座に目が眩んだに違えねえ」


とカズは断言した。
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