B L A S T
「オレにはそんな風に見えねえけどな。なあ嬢ちゃんはどう思う?」
えっ、と楓は顔を上げる。
「あの男のことよく知っているのは嬢ちゃんだと思うからさ。どう思う?」
「えっと…」
カズの鋭い視線が突き刺さる。
なんと答えていいやら迷うが、楓は声を振り絞った。
「…あたしもそう思います」
「というと?」
「ぼ、暴走族のことはよく分からないけど、ガヤはそんなトップとか地位とか気にするような人じゃないです。たぶんイツキさんが許せなくて自棄になってるだけだと思います」
ガヤは昔から正義感だけは強かった。
本当はイツキさんと仲直りしたいけれど、それ以上にイツキさんがジュンという人を突き放した行為が許せなくて意地になっている。
幼なじみの目線で見るとそんな気がした。
そっか、とタクマが小さく頷いた。
「やっぱ彼女の言うことは違えな」
「えっあ、あたし――」
ガヤの彼女じゃない。
慌てて否定するも、カズから差し出された茶封筒によって遮られる。
「女、だいたいの事情は分かったろ。こっからが本題だ」
「…これは?」
なにも書かれていないその茶封筒を受け取ると、手のひらに重みがのしかかった。
「イツキからジュンに宛てた手紙だ。これをジュンに渡してほしい」