B L A S T
Act.6

日曜日の車内は混んでいる。

今日は強い日差しで、窓から太陽が顔を出していた。

ここのところ雨が続いていたが朝の天気予報によると梅雨明けが近いらしく、夏はもうすぐそこまで来ていた。

やがて目的地を告げるアナウンスが流れ、うとうとしていた楓は慌てて人ごみをかき分けてバスを降りた。

とたんに生温かい風に包まれて額の汗がじっとりと滲み出る。


「暑い…」


バス停から少し歩いて三分ほどで、白い建物が見えた。

市民病院の看板がある。

なんだか懐かしい気分だ。

ここへ来たのは幼い頃、楓が交通事故に合って救急車で運ばれた時以来。

トラックに当たったにも関わらず奇跡的にかすり傷で済んだけれど。

その時担当医だった先生に「楓ちゃんは強い子だね」って言われているところをガヤに聞かれてしまい、"無敵の楓チャン"と呼ばれるようになったのもその頃から。

その呼び名のおかげで同級生に何度からかわれたことか。

楓にとってここは苦い思い出の場所でもあった。


「302号室なら三階になります。エレベーターを降りてすぐ目の前ですよ」

「ありがとうございます」


親切そうな受付の人にお礼を言って、出入り口付近のエレベーターに乗った。

ポケットの中からくしゃくしゃになった紙を取り出す。

それはタクマとカズから受け取ったもので、ここの住所と部屋の番号が書かれてある。

302号室。

聞くところによると、ジュンはそこで入院しているらしい。

例の事件から一年近くが過ぎているが傷はまだ完治しておらず今もここでリハビリを受けているということだった。
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