B L A S T
「初めまして、真田楓です」
と会釈すると、ジュンは目を丸くする。
「…えっじゃあもしかして」
「はいそうなんですよ。総長のコレです」
男が小指を立てると、ジュンはやっぱり、と呟いた。
あのう。
コレって…
その小指って…
その小指の立て方って!
あたし、もしかしてガヤの彼女だと"風神"の間でも勘違いされてる!?
慌てて首を左右に振る。
「あの、あたしガヤとは何でもないですよ。ただの幼なじみです、幼なじみ」
「またまたー。照れなくて大丈夫だから。楓さんのことは彬兄からいろいろ聞いてるよ」
とジュンは笑って本気にしてくれない。
バカガヤめ。
一体このいたいけな少年に何を話したんだ。
どうせろくなことじゃないだろう。
後でこらしめてやる。
「"無敵の楓チャン"だったんだってね」
ほらね。
ほらね。
ほーらね。
やっぱりろくなことじゃなかった。
「バカガヤのバカめ」
と楓が軽く舌打ちを鳴らすと、ジュンは無邪気に笑い声を上げた。
「彬兄嫌われちゃったー」
ふと、楓は違和感を覚える。
――噂だとジュンはあの事件のせいで人間不信になったと聞いた。
カズがあんなことを言っていたから内心不安だったけれど、思っていたよりジュンは明るく元気だった。
ただ、あの事件の被害者とはとても思えないが、彼が痛々しい傷を負ったことは車椅子が物語っている。