B L A S T

「初めまして、真田楓です」


と会釈すると、ジュンは目を丸くする。


「…えっじゃあもしかして」

「はいそうなんですよ。総長のコレです」


男が小指を立てると、ジュンはやっぱり、と呟いた。

あのう。

コレって…
その小指って…

その小指の立て方って!

あたし、もしかしてガヤの彼女だと"風神"の間でも勘違いされてる!?

慌てて首を左右に振る。


「あの、あたしガヤとは何でもないですよ。ただの幼なじみです、幼なじみ」

「またまたー。照れなくて大丈夫だから。楓さんのことは彬兄からいろいろ聞いてるよ」


とジュンは笑って本気にしてくれない。

バカガヤめ。

一体このいたいけな少年に何を話したんだ。

どうせろくなことじゃないだろう。

後でこらしめてやる。


「"無敵の楓チャン"だったんだってね」


ほらね。
ほらね。

ほーらね。

やっぱりろくなことじゃなかった。


「バカガヤのバカめ」


と楓が軽く舌打ちを鳴らすと、ジュンは無邪気に笑い声を上げた。


「彬兄嫌われちゃったー」


ふと、楓は違和感を覚える。


――噂だとジュンはあの事件のせいで人間不信になったと聞いた。


カズがあんなことを言っていたから内心不安だったけれど、思っていたよりジュンは明るく元気だった。

ただ、あの事件の被害者とはとても思えないが、彼が痛々しい傷を負ったことは車椅子が物語っている。
< 74 / 398 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop