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ジュンはやれやれと腕を組む。
「まったく彬兄も過保護なんだよな。こっちは大丈夫だって言ってるのに見張りまでつけちゃってさ。おかげで親も友達も近づけないなんて苦情がきて困ったよ。タク兄とカズ兄とも会わせてくれないし。ねえ楓さんからも彬兄によーく言っておいてよ。心配性もほどほどにしてくれってさ」
思わず、楓は吹き出してしまった。
日頃、楓がガヤに対して思っていることとそのままそっくりだったからだ。
「うん言っておくね」
金属の重なる音が響く。
ジュンはネックレスを手にとった。
その表情は曇っている。
「楓さんも大体の事情知っているかもしれないけど、今さ、彬兄と一兄ってすっごく仲が悪いんだよね。しかも原因がこの僕なんだから笑っちゃうよ」
と彼は顔をしかめ、自嘲した。
「二人は中学のときからずっと一緒で、僕はそんな二人に憧れてたんだ。彬兄はいつも明るくて僕を元気付けてくれて、言葉は乱暴だけどいざとなると助けてくれる。逆に一兄は静かで大人しいんだけど、すごく仲間思いで優しいんだ。なんていったって一兄のすごいところはあの回し蹴り。めちゃめちゃかっこよくてさ。もちろん彬兄のキレのあるパンチも天下一品だよ」
身を乗り出してガヤとイツキのことを話すジュンは、生き生きとした表情で目がきらきらと輝いていた。
そういえばテツという人もこんな目をしていたっけ。
彼らが共通しているのはガヤとイツキを慕う無垢な気持ち。
それだけ彼らの中でガヤとイツキは大きな存在なんだと思い知った。
「一兄と彬兄はお互いを信頼し合ってた。だから僕のせいで二人を切り離したんだと思うとすごく辛い。僕はあの事件が起きたことを一兄のせいだなんて思ってないんだ。僕が悪かっただけで。でも彬兄はまったく聞いてくれなくて…」
ジュンはガラスの向こうにある空を見上げた。
真っ青な世界に飛行機雲が浮いている。
「もう昔みたいに戻ることはないのかな」
と呟いた小さな声は、背後から近づいてくる足音に紛れて消えた。