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楓はずっと握りしめていた茶封筒をイツキに渡した。
「実はその手紙を井原純平くんに渡すようにカズさんとタクマさんに頼まれたんです。それで今日純平くんが入院している病院に行ってきました」
そして勢いよく頭を下げる。
「ごめんなさい。やっぱりあたしの手からじゃ渡せません。中身は読んでいないから分かりませんけど、もしイツキさんが純平くんに謝りたいと思っているんだったら…。あたしそういう手紙って自分で渡したほうがいいと思うんです。そのほうがより相手に伝わるんじゃないかなって」
きっとジュンはイツキが会いに来てくれるのを待っている。
謝罪の言葉が聞きたいとかそういうことではなく、昔に戻りたいといったジュンの無垢な気持ちがそれを望んでいるんだと思った。
そのためにはこの手紙をイツキ自身が渡さないと何も始まらない。
長い、間が空く。
顔を上げるとイツキは茶封筒から取り出した便箋一枚を広げて読んでいた。
なぜだか、その口元は緩んでいる。
「あんた、騙されたな」
ぽつり、と彼が一言。
「えっ」
意味が理解できない楓は首を傾げる。
「この手紙は俺が書いたんじゃない。書いたのはあいつらだ」
そう言ってイツキは便箋を楓によこした。
そこにはひどく汚い字で
"戻ってこい"
とたった一言だけが書かれていた。
その下に
"BY.タクマとカズ"