B L A S T
a―ha。
もはや怒りを通り越して楓に残ったのは引きつり笑いのみだ。
ようするに。
ようするに、だ。
あたしはタクマとカズにイツキから宛てた手紙だと嘘を吐かれた挙げ句、パシリに使われたということになる。
しかもその手紙の内容はたった一言、戻ってこい。
もし彼らに言えるものなら言ってみたい。
あんたが逝ってこい。
「あいつら、よっぽどあんたのこと気に入ってるみたいだな」
くっくっ、とイツキは肩を揺らして笑っていた。
気に入ってる?
それはパシリとしてですか?
パシリとしてなんですか?
全然嬉しくないんですけど!
「あたし帰ります。もう二度とこんなところに来ません」
楓はイツキを睨みつけると半ば自棄気味になってプレハブを出た。
自分が情けない。
少しでも彼らの力になろうとしたあたしがバカだった。
「待て」
突然、強い力で腕を引っ張られて体がよろめく。
「この辺りは女が一人歩いてると危ない。俺が家まで送るよ」
とイツキは真っ赤なヘルメットを差し出した。
それからプレハブの隣にあったバイクに跨ると、エンジンの音ともに熱気のこもったガスが排出される。
後ろに乗れ、とイツキが目で合図を送った。
「べ、別にいいですってば。一人で帰れますから」
楓は思わず受け取ってしまったヘルメットをイツキに押しつけるが、彼は無言で鋭い目を向けた。
そしてため息交じりに呟いた一言。
「いいから黙って乗れ」
さすがリーダーだけあってその迫力はカズとは比べものにならない。
楓は黙ってイツキの指示に従った。