B L A S T
「ねえむかつくと思わない?」
「うん」
「ガヤは意地張ってるだけなのよ。それが見ててイライラするっていうか。本当むかつくと思わない?」
「うんそうだね」
「あーもう!なんかすっきりしない」
「ねえ、楓さん」
「なに」
「ここに来たらまた彬兄に怒られちゃうよ。大丈夫なの?」
「…知らない、あんな男」
楓は怒りに任せて、無理矢理瓶の中に花を突っ込んだ。
その様子を見ていたジュンがベッドの上で苦笑いを浮かべている。
「こりゃ彬兄の苦労がしのばれるな」
「なんか言った?」
楓が睨むと、ジュンは慌てて手を振った。
まったく。
あたしはガヤとただの幼なじみだっていうのに、ジュンは信じようとしない。
楓は息を吐いて、扉の隙間からこっそり廊下の様子を伺った。
長椅子のところで"風神"のメンバーらしき男二人が見張っている。
この前の男とは別の人だった。
今日は平日で、ガヤがジュンの見舞いに来るのは日曜日だけだと聞いていたから彼が来る心配もない。
それにしても向こうもかなりのご立腹のようだ。
連絡もよこさず、朝も放課後も迎えに来ないときた。
明らかにあたしを避けている。
別にいいけど。
あたしだって顔も合わせたくないし。
そっちがそのつもりなら、あたしだって言われたとおり勝手にしてやる!
「ねえねえ、あたしにできることない?」
楓は廊下側に聞こえないように声をひそめた。