もう一度、はじめから
 メンデルスゾーン「詩人のハープ」あたしの大好きなピアノ曲。小学生の時の始めてのコンクールで弾いた曲だ。後にも先にも、毎日ピアノの練習をしたのはあの時だけだ。
 ハープで奏でるように優しく、流れるような16分音符で始まり、右手と左手で入り組みながら主旋律と副旋律を演奏する。
「またそれ弾いてる」
 あたしが弾き終わると、桃が少し呆れた顔で言った。
「それ、試験曲じゃないでしょ!」
「でも試験、メンデルさんだもん」
「もしくはシューベルト!」
「やーだー」
 そんなコントのようなやり取りをしていると、あたしの携帯が鳴った。
「小田だ!」
「さぁ」
 携帯の表示は、小田だった。
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