蒼翼記
蒼い空を背に、大きく翼を広げるリンの姿があった。

悠々と、しかし鋭く、降下する。
肩に幾度か太刀を入れるが、ゴースヴースの動きが鈍る様子はない。


その巨体から繰り出される攻撃をひらひらと交わしながら、リンが呟く。

「痛くないのかな…」


ゴオオォァァァァァァアッッ!!

地をひっくり返さんとするような雄叫びとともに、再度リンに攻撃を与える。
しかし、その手は空を裂き、次の瞬間ゴースヴースの巨体は地に崩れ落ちた。


「なるほど、脚を切ってしまえば動けまい」

クロスメイアスの感嘆の声の通り、リンは正確にゴースヴースの脚の靭帯を断ち切っていた。



仲間の元に舞い降りたリンが、痺れた手を振りながら冷や汗を拭う。


「固くて切り抜けなかったらどうしようかと思った」









その一部始終を、木陰の闇から見ている者がいた。
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