蒼翼記
見れば、こちらを苦しげに仰ぎ見るその瞳も本来の琥珀色に戻っている。
城で飼い馴らされた賜物か…と、男は内心皮肉った。
「…そんなに人間が憎いか?」
リンの口から出た言葉に、男は唖然とした。
憎いか、だと?
何故憎まずいられるか、
妙な事を言っているのはむしろリンの方に思えた。
違和感。
この男には違和感を感じる。
他の羽付きと、否、今まで会ってきたどの異人類種より異質だった。
内情の不安を押し隠し紅い眼の男は冷たく嗤う。
「貴様に言う義理などないわ」
周囲の木の葉がまた舞い上がり始める。
男が姿を消す前兆だということは容易に想像できた。慌ててリンが声を上げる。
「なんて名前なんだ!?」
この後に及んで、と周囲は呆れる反面、その失われぬ彼らしさに思わず笑みを浮かべた。
男はそれを黙殺し、質問を投げ掛けた。
「獣と人、貴様はどちらだ?」
大きくなりつつある風の音の中で発せられたその問いに、リンは彼特有のよく通る声をもって即答した。
「僕は人間だ。羽があったってそれは変えられない」
真っ直ぐに、迷いないその答えに、男は冷笑を返し姿を消した。
城で飼い馴らされた賜物か…と、男は内心皮肉った。
「…そんなに人間が憎いか?」
リンの口から出た言葉に、男は唖然とした。
憎いか、だと?
何故憎まずいられるか、
妙な事を言っているのはむしろリンの方に思えた。
違和感。
この男には違和感を感じる。
他の羽付きと、否、今まで会ってきたどの異人類種より異質だった。
内情の不安を押し隠し紅い眼の男は冷たく嗤う。
「貴様に言う義理などないわ」
周囲の木の葉がまた舞い上がり始める。
男が姿を消す前兆だということは容易に想像できた。慌ててリンが声を上げる。
「なんて名前なんだ!?」
この後に及んで、と周囲は呆れる反面、その失われぬ彼らしさに思わず笑みを浮かべた。
男はそれを黙殺し、質問を投げ掛けた。
「獣と人、貴様はどちらだ?」
大きくなりつつある風の音の中で発せられたその問いに、リンは彼特有のよく通る声をもって即答した。
「僕は人間だ。羽があったってそれは変えられない」
真っ直ぐに、迷いないその答えに、男は冷笑を返し姿を消した。