蒼翼記
「その翼は生まれた頃からあるの?」
リンから見たライアの瞳に、同情や批難の色は見えなかった。
あるのは、純粋な好奇心。
「うん、そうだよ。」
「どうして?」
物も覚えぬうちに迷い込んだライアに名を付けあらゆる事を教えたのはメイスフォールだが、『羽付き』等の異人類種―人と人の間で稀に起こる突然変異によって生まれる特異な人間―については教えていないようだ。
いつもなら「メイスフォールに聞いて」と言って逃れる事が出来るのだが今はちょうど彼が森を飛んで回る時間帯―何日か生活を共にしていてわかったがメイスフォールはいつもライアに付きっきりでいるわけではなく一日の大半は森の何処かを巡っているらしい―だった。
しかたなくリンは部屋の中の丸太に腰かけ、ライアにも適当に座るよう言った。
するとライアはなんの躊躇いもなくリンの隣に座る。
肩までの真っ黒な髪と同じ色の双眸がじっとリンを見る。
その姿は美しい人形のようで、リンはしばしライアに見とれた後、我にかえりまずは『異人類種』について簡単な説明をしたあと、『羽付き』についての説明を始めた。