蒼翼記
「なんだ?リン関連って」



この情報収集能力に長けた少年はよく人を妙なあだ名で呼ぶ。

彼にとってリン・リカルドは『ビップ』らしい。



「ビップが〜森に住むのにー手引きをしてる女の子がいるみたーいだー」

「女の子?」

「ビップよりー前から森にいたみたーいだーけどー…」



ガシャッ…ガシャッ…



廊下の向こうから微かに聞こえ始めた鎧の音に、双方口を閉じた。

その音は段々牢の方に近付いてくる。





妙だな、と思った。





巡回は先程通ったし、食事の時間はまだ先だ。
この階に羽付きは自分一人のはずだが、その自分がたった今任務をこなしてきたばかりだ。

なんの用だろうか。









ガシャッ

憲兵は目の前の廊下で止まった。
進行方向を向いたまま少し強張った抑え気味の声をあげる。


「異人類種ナンバー04、チェオ殿で相違ありませんでしょうか」

「…そうだが」



驚いた。
何故正式に記録されていない俺の名をこの憲兵が知っている?
まだ怠い体を起こして憲兵を見る。
鎧を纏う憲兵の顔は自分の年齢より2、3幼く見える。
赤毛の下の茶色い瞳は真面目そうに前を向き、心なしか緊張気味に口元を引き締めている。




「憲兵サンがわざわざなんの用だ?」


「はっ私、ガイカス・トリアノスと言います。
異人類種ナンバー00、リン・リカルド殿の事でお尋ねしたいことがありやって来ました」
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