蒼翼記
この青年は異人類を差別していないのだ。
その上不審に思った事は追求しようとする度胸もある。



悪い奴ではないだろう。



先からこちらを見ずに話していたのだって他の憲兵に見られた時に巻き込まない為だろうし、きっと城に内緒で動いているのだろうことがわかる。

そう、本当に個人的に。




チェオは重い身体に鞭打って立ち上がり、格子のすぐ近くまで来て、笑いかけた。

「お前は俺達異人類種を等身大の立場で見てくれた。
腹割って話そう」


こちらを向こうとするトリを手で静かに制する。

他の人間の気配を遠方に感じつつ、チェオは青年に聞こえるように呟いた。




「明日城内で行う一斉確認の時なら抜け出せる。その時にこの搭の屋上で」



格子から腕を出し軽く背を叩いてやるとその意味に感づいたガイカスが何事もなかったかのように歩いて行き角を曲がって行った。

チェオは再び牢の奥に行き、崩れ落ちるように脱力した。



少しして、巡回に来た憲兵がじとりと二人の異人類種をねめつけながら通り過ぎて行った。
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