蒼翼記
「おーれはしんよーでーきなーいなぁ〜」


おちゃらけているような口調に混ざる、凍てついた響き。
幼いこの少年が、町でどんな扱いを受け、どんな傷を負ってここにいるのか、生まれた頃からこの城にいるチェオにはわからない。



「…オウル」

「なーぁに〜ぃ?」

「その声やめろ。キンキンして頭痛くなる」



オウルは元の高さに声を戻すとまたキロキロと笑った。




自分だって昔は普通の人間なんて大嫌いだった。
特別扱いをされていた孤高の羽付き、リン・リカルドも…

(でも…)




あの夜、その考えは覆された。
リンと話した事で、

他の人間も、話したらもっとわかることがあるんじゃないかと、気付くようになった。






だから、あの晩交わした少ない会話が、それに気付かせてくれたあの青年が、今も大事に思えてならないのだ。


「人間はぁ…キライだよー…」


そう呟くオウルの小さな背は淋しげで、どこか泣いているようだった。


「おやすみ、オウル」

「うん…」


自分に出来る事は、これだけ。
ただ出来るだけ優しい言葉をかけることしか、できないのだ。
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