蒼翼記
自分の母親を殺したと、淡々と語るリンの話を、ライアはただ聞いていた。







その目には、『驚き』は見て取れるものの、

『恐怖』

『憎しみ』

『怒り』

『失望』などは漂っておらず、
ただ、純粋にリンを見つめていた。

その様子に、リンは少なからず動揺を覚えたものの、悟られまいと無表情を決め込んだ。





「怪我が完全に治ったら、ここを出てこの森の中で生きるよ。

暴走した時に、君やメイスフォールを殺してしまわないように。」















しばらく続いた沈黙をライアが破る。


「リンは、その羽で空を飛べる?」


リンが顔を上げてライアを見ると、彼女は片翼だけでもリンの両手幅程もあるリンの翼を興味深そうに見ていた。






「あ…うん。飛べるよ。」

「素敵っじゃあ元気になったら私を連れて空を飛んでっ!
行きたいところがあるのっ」








さっきの話を聞いていなかったのではないかと思う程に、ライアの表情は自然で、楽しそうだった。
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