蒼翼記
人語とは実に興味深い。
それは仲間同士の中でより複雑に交流する為に編み出された人間の歴史そのものである。


そしてそれを自在に扱う人間達もまた、私にとっては非常に興味深いものだ。
しかし、かと言って油断はできない。

この『聖なる森』も、人間達の間では『忌嫌の森』と称される。
無防備でいれば森があぶないのだ。







「考え事か?メイスフォール」

「いかにも」


洞窟の入口に立つ二人の青年は、躊躇いなく中へと歩を進める。
声をかけて来た方は常人よりも遥かに長身で柔らかい喋りをする。


「またしても城を抜けて来たと見えるね?」

「あぁ」

「そんな事より梟、森の異変には気付いてるんだろうな?」



突然不機嫌そうに口を開いた銀髪の友に私は返す。



「もちろんだとも」

「しかし何が起こってるかまではわからない。そうだろう?」


「ほっほ…いかにも」



私の数少ない人間の友人は互いに顔を見合わせた。








「近々、城は森を攻めるつもりのようなんだ」
< 145 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop