蒼翼記
月はただ見下ろすだけ
広大に広がる『忌嫌の森』
いや、
『聖なる森』と呼ぶべきだろう。
その中枢に、『王聖地(ノウセイチ)』と呼ばれる泉がある。
字の通り、この森の王だけの領域。王の住み処だった。
「…今ライアと話していたのは例の…?」
月光に照らされた泉の中央に突き出た岩の上に座るこの広大なる森の王は、その細身にはあまりに深すぎる低音を響かせ呟いた。
「いかにも、数日前拾った『羽付き』の者にございます。」
その独り言にも取れた問いに答えたのは、王によってこの泉に呼び出されたメイスフォール。
その老梟は泉のほとりで本来なら梟の脚があるはずの場所から生える短い剛腕を組み、王にひざまづく形で控えていた。
「ライアは随分ご執心のようじゃないか。」
かなり聴力のあるメイスフォールだが、二人の会話の細部までは聞き取れない。
森の敷地を越える聴力を持つ、王が聴いていた内容がなんだったのかは、予想がつかなかった。
「そうですな…やはり同じ人間であることで親しみを持ったのではないでしょうかな。」
すぐに、王が「ふん」と鼻を鳴らすのが聞こえた。
いや、
『聖なる森』と呼ぶべきだろう。
その中枢に、『王聖地(ノウセイチ)』と呼ばれる泉がある。
字の通り、この森の王だけの領域。王の住み処だった。
「…今ライアと話していたのは例の…?」
月光に照らされた泉の中央に突き出た岩の上に座るこの広大なる森の王は、その細身にはあまりに深すぎる低音を響かせ呟いた。
「いかにも、数日前拾った『羽付き』の者にございます。」
その独り言にも取れた問いに答えたのは、王によってこの泉に呼び出されたメイスフォール。
その老梟は泉のほとりで本来なら梟の脚があるはずの場所から生える短い剛腕を組み、王にひざまづく形で控えていた。
「ライアは随分ご執心のようじゃないか。」
かなり聴力のあるメイスフォールだが、二人の会話の細部までは聞き取れない。
森の敷地を越える聴力を持つ、王が聴いていた内容がなんだったのかは、予想がつかなかった。
「そうですな…やはり同じ人間であることで親しみを持ったのではないでしょうかな。」
すぐに、王が「ふん」と鼻を鳴らすのが聞こえた。