蒼翼記
♪〜♪〜〜
リンが王聖地に着いた時には、また新しい死体が喰われたあとだった。
血に沈んでいる見覚えのある黒衣に愕然とする。
ついさっき洞窟に来た彼の声が蘇る。
『覚悟を決めろ』
覚悟ってなんだ?
なんの為に?
何故?
どうして?
……
♪〜〜♪〜♪〜
ライアはぺったりと座り込み歌っていた。
よく聴いてみると、そこに明確な歌詞はなく、メロディだけを口ずさんでいる。
相変わらず無表情で、焦点の定まっていない目だが、リンにはひどく懐かしいメロディだった。
「リン…」
リアンと呼ぶべきなのだろうか?
僕らは出会わなければよかったんだろうか?
生まれなければよかったんだろうか…
唄に呼応するように、紅い翼がさらに肥大していく。