蒼翼記
「ライアは、この地の者達に全幅の信頼を置き、無条件で慈しんだ…」


言いながらその長い腕でライアの頭をそっと撫でる。
愛しい、愛しい少女。


世の中の理不尽さから自分を守る為に壊れた少女。



「自覚はなかったにしても、ライアは私の、この地の大切な花だった」




そう微笑んだ顔が、まるで泣いているようだった。




「……お前は、全てを忘れたライアと共に生きるのか?」




ライアの分まで記憶を背負って…










「…それを守る為に、全て失ったんだ」







友を

仲間を








「…後悔、しているか?」


「してない」



それだけは言える。
こんな複雑な心境でも、結局はライアが中心にいるのだから。




グラジオラスはただ一言「そうか」とだけ呟くと、ライアを撫でる為に屈んでいた背を伸ばした。







「私は、これから森を甦らせる」
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