蒼翼記
それから、『仕事』が終わった後のほんの僅かな時間に、僕はリンのいる地下牢に立ち寄るようになった。
暗闇の中で、リンはいつも嬉しそうに唄を歌い、その唄を聴き終えてから僕が外の様子を話す。
その空間だけが、それからずっと僕の楽しみになっていた。
「ねぇ、鳥さんはあの番号みたいな呼び方以外に名前はないんだよね?」
「最初にそう言っただろ。」
「じゃあさ、僕の名前を鳥さんにあげるよ。今日から鳥さんがリンってことで。」
「なんでまた急に…」
そう聞くと、リンはさらりと言葉を返す。
「僕もよくわからないけど、多分もうすぐいらなくなるから。」
よくわからなかった。
よくわからなかったけど、そろそろ時間だった。
去り際に背後に響いたリンの、いや、ついさっきまでリンだった僕が声しか知らない不思議な唄い手の声は、優しく優しく僕の背を押す。
「じゃあまた。リン。僕の鳥さん。」
暗闇の中で、リンはいつも嬉しそうに唄を歌い、その唄を聴き終えてから僕が外の様子を話す。
その空間だけが、それからずっと僕の楽しみになっていた。
「ねぇ、鳥さんはあの番号みたいな呼び方以外に名前はないんだよね?」
「最初にそう言っただろ。」
「じゃあさ、僕の名前を鳥さんにあげるよ。今日から鳥さんがリンってことで。」
「なんでまた急に…」
そう聞くと、リンはさらりと言葉を返す。
「僕もよくわからないけど、多分もうすぐいらなくなるから。」
よくわからなかった。
よくわからなかったけど、そろそろ時間だった。
去り際に背後に響いたリンの、いや、ついさっきまでリンだった僕が声しか知らない不思議な唄い手の声は、優しく優しく僕の背を押す。
「じゃあまた。リン。僕の鳥さん。」