蒼翼記
今日もまた『仕事』に出掛ける。

いつもと違ったのは、『仕事』の前に食事を運んできた使用人がその囚人の事を少し喋った事だった。



囚人は、異人類種の中でも珍種中の珍種だった。
あらゆる異人類種、『羽付き』よりも異色で異能。






通称『毒華(ドクバナ)』。




その能力は今確認されている全種類の異人類種の統括。
異人類種の中で最も凶悪とされる『羽付き』でさえも『毒華』の命令には歯向かわない。
だからこそ国はその力を使った反乱を恐れて『毒華』として生まれてきた子供は城に幽閉され時によっては殺される。

そして力の要はその眼力とされ効力を封じる為に城に幽閉される『毒華』は皆目隠しをしているとの事だった。




…―聞けば喋ってくれるもんだな―…


軽く睨んだだけで機密をあっさり吐いた使用人は喋り終わるなり食事を置いて逃げるように姿を消した。


別に同じ異人類種だからと言って殺すのを躊躇ったりはしない。




『仕事』で同族を殺す事には、もう慣れているから。
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