蒼翼記
…狂人だろうか?

と、思った。






こんなところ(最終死刑場)でそんな風に微笑えるのは狂った奴くらいだ。

それでもその囚人の持つ柔らかい空気が、あまりにこの場所に合わなくて、僕は一瞬足を止めた。











…さっさと、終わらそう。









妙に胸騒ぎがする。

早くここから出たい。


腰にある羽から羽根を一本抜いた。




鈍い痛みが走るがいつもの事なので気にしない。

指先に意識を集中させる。と、手に持つ40センチ幅の羽根が硬化していく。


羽根が完全に鉄になって剣になったのを確認してから僕は囚人に歩み寄る。


真っ白な囚人は穏やかに座っている。


剣を振りかぶり、横薙ぎに力任せの一閃を繰り出す。

あまりにも自然で慣れ過ぎたものだったその操作は、その思いもよらなかった事態に即座に反応することが出来なかった。


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