蒼翼記
「いつもの演習場だな?」

「はっはいっ!!」





腰の翼を開いただけでその赤毛の下級兵はすくみそうになった身を精一杯直立不動で保とうと努めている。
僕より少し幼いくらいの顔立ち。



ここまで恐れられるようになるといい加減苦笑いもしたくなるものだ。






「そう恐がんないでくれ。取って喰やしない。」




苦笑しながらそう言うと下級兵は少し緊張を解した様な顔をした。

前はこんな風に他人の心情の変化に興味を持つなんて事しなかった。

ただ無気力に、毎日を過ごすだけの日々。



拒絶される事になんの哀しみも覚えない代わりに人と接する事の心地良さを知らなかった。







君が教えた。

君のおかげなのか、

いや、

君のせいなのか?







リン…





牢を出てすぐの大窓を開ける。


「伝達ご苦労。確かに引き受けた。」

振り返らずに言うと下級兵の纏う鎧が敬礼の動きにガシャリと重たい音を立てるのが聞こえた。


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