蒼翼記





ウガアァァァァァァァァアッッ!!

















演習場で暴れる黒い髪の『羽付き』は、僕が着く頃には既に付近の小隊―おそらくこの男が所属する小隊だろう―の者達を血の海に沈めていた。



僕が演習場に降り立つと、男は羽付きが『憑かれている』時特有の蛇に似た瞳孔が縦に裂けるような金色の瞳でギロリとこちらを睨み付けた。


ため息をつきつつ軽く地面を蹴る。


向こうが動く前に、動く。





男が完全にこちら側に向き直るより速く、僕はその反対側、男の背後に回りその首筋に手刀を打ち込む。



ガッ!!


「かッッ……ハ……!?」








男は至極呆気なくその芝生の上に倒れた。


その脇に屈み込み片目の瞼を押し上げる。

金色の瞳は熱が冷めるようにその男の本来の瞳の色であろう深い黒に変わっていった。
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