蒼翼記
それにしても、妙だった。




いつもならこのくらいの時期には大量の銃器を仕入れているはずだ。

しかし、その気配は微塵もない。




何かが、おかしい。

嫌な予感を感じて、僕はその夜城の中を歩いて回った。

銃器を使わないなら、新しい異人類種を大量に『保護』したのかもしれない。


夜間の城内はあまり歩いた事がなかったから、少し新鮮な気分だった。





レリーフの彫り込まれた柱も、

沢山の画家達が描いた天井絵画も、

贅沢の限りを尽くしたような庭も、皆違う顔を見せる。














何年もこの城にいるのに、初めて来た場所にいるような気さえした。
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