蒼翼記
血の気の失せた肌は『あの日』より真っ白で、閉じた瞼は不自然にくぼんでいる。






そしてその脇のガーゼを重ねたトレーには、














眼が、



抜き取られた翠色の眼球が転がっていた。


「ぅ…ぁ…ぁ、うわあぁぁぁぁぁ!!」



僕は悲鳴を上げ、足音も気にせず走り出した。

狭い通路の中じゃ羽は邪魔だから、ひたすら走った。






後ろで勢いよく開け放たれたドアの音と、

忘れかけていた血と死人の臭いが追い掛けてきた。






僕は、ただ怖かった。




あの眼は、かつての"リン"の眼は、僕を操るために取り出されていたんだ。





そうなったら、僕は意識のないまま人を殺し、意識が戻った時には血まみれの自分を目の当たりにするんだ。





そんなのは、ごめんだ。

もうたくさんなんだ!
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