蒼翼記
こんなに走り続ける自分の足を遅いと感じたのは初めてだった。
やっと薄暗い廊下の明かりが見えて、空気を失ったように冷気を掻き分けて地下階段を駆け登った。
戻ったばかりの廊下の空気はずっと濃い冷気の中にいた僕の喉に生暖かい空気を送り込んできて、急に肺を満たした酸素に思わずむせた。
その声に反応してか牢の中の『羽付き』達が怪訝そうにざわめき出したのがわかった。
…逃げなきゃ―…
今まで一度も考えなかった言葉が頭の中でサイレンを鳴らしていた。
出口を走り抜ける僕の耳にチェオの声が聞こえた気がしたけど、引き返す事が出来なかった。
籠の中の鳥は、
籠の外では生きて行けない。
それでも、
僕は飛んだ。
城壁を越えて、
高く高く飛んだ。
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