蒼翼記

人好きな梟、人嫌いの王

泉の中央の岩に座す影は、不機嫌そうに息をついた。






人間好きなあの梟は、またしても迷い込んだ人間を試している。





この森には人間など汚らわしくて、奴らの声がするだけで虫酸が走る。



「メイスフォール」

「此処に」





呼ばれた主、人の腕のような脚を持つ人面の梟の声が目の前の林から響く。



「いくらお前とて、私は気を長くは持たんぞ」

「まぁまぁ」



不機嫌さのあいまった殺気混じりの声を軽く受け流すような調子で、不機嫌の原因ともなった張本人はのんびりとたしなめる。





「ほんの一時の遊びと大目に見てくださるよう」




いつものその楽観的な物言いに普段あまり感情を出さない王は早くも諦める。


どうせ人間は森の住人達に喰われるに決まっている。
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