蒼翼記
チカラ試し
メイスフォールの気配に導かれどのくらい歩いただろうか。
いつの間にか森が開け、月光を全面に反射する神々しい泉の間に出た。
「此処が…」
「さよう。
我らが王の御身が留まる場所、"王聖地"である」
リンが振り向くと、さっき進んできた森の暗闇からこちらを見やる不気味な、しかし見慣れた眼を見つけた。
不意に、泉の方から声は響いた。
「リン・リカルド」
「!」
改めて泉の中央に体を向ける。
泉の中央、そこに突き出す岩に座す影を見てとる事が出来た。
その痩身なシルエットからは予想もつかないその存在感に圧迫され、頭上の月と同じ輝きをもつ眼光に数秒程、みとれた。
しかしすぐに我に返り片膝をつきひざまずく。
いつも通りの声音で、自分の中での精一杯の礼をみせる。
「お初にお目にかかります。この森に住み着く許しをいただきたい」
リンの落ち着きぶりにしばし、王は目の前にひざまずく青年を眺める。
人の子で彼を前にして気圧されなかったのは、幼い日のライア以来だろうか。
常人であったなら彼を前に畏怖を持たずにいられる者はそういない。
王はゆっくりと口を開いた。