蒼翼記
「森の者達は、人を見れば喰う。それが普通だ。しかし―…」





その先を何となく察して、返す。




「彼女は普通じゃなかった?」



メイスフォールは「いかにも」と嬉しそうに答え続ける。




「誰もライアを喰おうとする者はいなかった。
それどころか皆ライアを愛でるようになった。

食事の必要性が薄い我らが、餌を持ち寄るようになった。
わざわざ人里近くまで行き、衣類や生活用品を持ち帰るようになった。



…この住み処も、我らが仲間が作り得た物だ。」







たしかに、首を巡らせて周りを見れば、下の方は見えないが、蔦の這う積み上げられた石の壁や天井の岩などは、自然に出来た物でないことは容易にわかる。






「そしてライアは遂にこの森、我らが『王』にさえこの森に生きる事を許された。」



彼らの『王』とはおそらく国でこの森の『主』と言われる存在だろう。






「メイスフォール…貴方があの子といる理由は…?」


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