蒼翼記
金の毛を持つ猿頭、アキがリンの肩によじ登りクロスメイアスと目線を同じにする。

「死に方を選ぶ強者、石帝クロスメイアス」
「石帝?」

「我が種族は寿命が長く生まれながらにして知能が高い。本意に足りぬ死を遂げた同族達はその屍を石と変える」

「不本意な死…」


そういえばあの時、『リン』は笑っていた。
あの笑顔は未練を押さえ込む為のものだったのだろうか…?

ずっと暗闇の中で唄う、あの声が頭の中で反響する。


「リン、リンったら!」
「…ぁ」

少しあの記憶に埋没していたらしい。
アキが横合いから顔を覗きこませていた。

他の5匹も足元でリンを見上げ、クロスメイアスまで怪訝そうな目を向けている。

「どうしたのさ?すごい汗だよ」

いつの間にか額には玉になる程の汗をかいていた。

「…なんでもないよ。少し昔を思い出してただけだ。大丈夫」


リンは汗をぐいと拭って苦笑した。


「それより、あのスポゥケィって?」

「我らが森の情報屋さ。
奴らの仲間は森のあちこちにいて、森の中での事はあいつらのおしゃべりで筒抜けってわけ」





先程のことについて追及する気のないアキはリンの質問に答えると肩を軽く叩いて彼の肩を降りた。


「もう夜があける。食べ物を探しに行こう」


暗い森には薄明かりがさし始めている。
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