蒼翼記

想いに馳せる僅かな熱を

穏やかな陽射しの入る午後。
少女はただ日をその身に浴びながら座っている。

「考え事ですかな?ライア」
「メイ…」

振り返ると、日の射さぬ木の葉の闇の中に薄ぼんやりと白い毛に埋もれた人面があった。
メイスフォールはいつも日の下には出ない。

ライアは力の抜けた調子で向き直る。

「なんかぼーっとしちゃうの」
「リン・リカルドが『洗礼』の期間に入ってからずっとですな」
「もう5日経つのよ?グラジオラスはなんにも教えてくれないし」


そう言うとライアはぷっと頬を膨らませ唇を尖らせた。


「まぁそう拗ねなさるな。王も考えあっての事」

「むー…」

ライアはリンがいなくなってからずっとこの調子だった。

「今何してるのかなー…」

何気なく出てくる言葉の端々にリンへの信頼の念が垣間見える。
この短い間に何がライアの中でリンの存在を大きくしたのだろう。

人と言うのは、全くもって面白い生き物だった。
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