†シークレット・ラブ†

裕美とも別れた1ヶ月後。


俺はこの部屋を出る事を決めた。


祥子との思い出がたくさん詰まったこの部屋で


1人で過ごすのは、酷な話だ。


「忘れ物はないですか?」


引っ越し業者の言葉に「何もないです」と告げた。


忘れ物は、なにもない。


この部屋に忘れ物などなにもない。


この部屋にあるのは…失ったものばかりだ…。


夫婦って…なんだったんだろうな?


そばにいることが当たり前だと思っていた…


何もかもが…俺のことを、待っていてくれる事も…抱きたい時にアイツを抱ける事も…


全てが当たり前過ぎて…。



一番大切な事を、俺はいつの間にか見失っていたのだろう…。


一番大切な…アイツという存在と心を…。



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