君に伝えたい
「俺、スカウトされたんだ。」
何も喋らない美咲の替わりに、下を向いたままの俺が口を開いた。
「スカウト………?」
「そう、『モデルにならないか?』って。」
美咲と離れてる間、気晴らしに街をフラフラしてたら声をかけられた。
『一回撮るだけとってみない?。』
『はぁ………』
ヒマだったし、特にやることもなかったから
試しに一回撮影してみた。
そしたら、
『本気で、芸能界に来てほしい。』
『え………?』
そう言って事務所の人に頭を下げられた。
正直、戸惑った。
こんなに凄い事言われるとは、思ってもみなかったから。
『……君、ホントにモデルとしての経験はないのかい?』
『はぁ…、コレが初めてっすね』
『…凄すぎる……カメラマンやってきて、こんなに凄い奴は初めてだよ…』
カメラマンにまで凄い事言われた。
俺、
………そこまで凄い奴じゃない。
「それから、俺、転校するから」
「えっ………!?」
「一応、芸能界に入るわけだから、芸能クラスがあるところに行くんだ。」
そう言って、俺は顔を上げた。
……………そう、俺はそんなに凄い奴じゃない…
………大好きな人を泣かせちゃうような、最低な奴だ。