君に伝えたい
『……俺も歌手目指そうかな~。』
『ホント!?やったぁ!仲間だ仲間~!。』
……仲間
俺も歌手目指そうかな…
『俺の歌。大切な人達に届いてほしいな…』
それは告白ですか?
『だね!あたしもがんばんなきゃっ。』
『出来ればビックになりてぇな~。』
『でも夏生ならいけそうっ!』
『まぁ、狙うなら夢はでかくもたなきゃな!』
二人はどんどん夢を膨らませていく。
――きっとこの時に思ったんだ。
“あ、俺って夢ないな。”って
だから心の何処かで焦ってた。
一人だけ取り残されてしまうんだって。
二人だけ駆け足で何処か行ってしまいそうで。
ホントにホントに怖かったんだ。
夢が無い事が。
美咲を見つめる夏生の目が。
一人で歩いていくって事が…。
「……っ怖いんだよ…」
今、まさに俺は一人ぼっちだ。
ホントに追い掛けたい夢も無い。
何も、
何も無い。
「………全部無くなってくれよ…」
そうすれば、怯えなくてすむから。
だから。何もいらない。