【短編】君を想う
目撃した女
地元に着いて、近くの本屋に入った。
復習用に手頃な参考書がないかと思って。
棚に並んだ参考書に手を伸ばした時、カバンの中の携帯が震えた。
≪着信:千鶴≫
遅れるって連絡か?
それとももう帰って来たか?
本屋を出てから通話ボタンを押した。
『修ちゃん? 今駅前だけど、ご飯食べた?』
今、駅?
そう聞いて、改札口付近に目をやった。
すると、駅前で電話をしている千鶴を見つけた。
本屋にいることを告げ、気づいた千鶴に手を振る。
「修ちゃん遅かったんだね?」
千鶴と時間を合わせるために図書館に行ってた話をしたら、驚いたような感心したような顔をした。
そこ、驚くところか?
飯を作るかどうしようか、って言うから、久しぶりに外で食べることにした。
千鶴に負担かけたくないし、どうせ、家には食材らしい物はないんだから。