【短編】君を想う
なんだ、照れてんのか?

髪を撫でながら、耳が赤いことを告げると怒られた。



「しゅ……へい……?」



俺らのやり取りを黙って見ていたらしい智明が、ようやくリビングに入って来たみたいだった。

その声を聞いて、弾かれたように俺から離れた千鶴。


ここからは、俺のちょっとしたイジワル。


DVDを取り出そうとデッキに向かうけど、千鶴も智明もお互いを見つめたまま動こうとしない。


……動けないのか。


事の展開についていけない、って感じか。


「……なん、で……」

千鶴の掠れた声に、『バイト終わったら来るようにメールした』と返事をしたのは俺。


「千鶴? 泣いてた……のか?」

……智明もタイミング良すぎだよな。

うまい具合に泣いてる千鶴と、涙を拭ってる俺に遭遇するなんて。



あれ、後から見てたらキスしてるように見えてたかも。

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