【短編】君を想う
チャイムの音にドアを開けると、きれいに化粧を施した千鶴が立っていた。
思ってたよりも早く来たことに驚き、それを伝えたらなぜかキレられた。
「今日メイク濃いね」
そう言って頬に手を添えたら、困ったように瞳を揺らした。
……まぶたが少し、腫れていた。
昼飯がてら、そのまま家を出て駅前に向かった。
千鶴はクラブサンドを口に運びながらどこに行くのか聞いてきた。
「千鶴はどこ行きたい?」
逆に聞き返してみれば、「修ちゃんの気分転換でしょ」と口を尖らせる。
俺はコーヒーを一口含みながら考えた。
買い物?
映画?
……遊園地?
考えていただけのつもりが、声に出ていたらしい。
「その中だったら、修ちゃんはどれ?」
相変わらずなにやら不満そうに口を尖らせている千鶴を見ながら考えた。
千鶴は今、どこに行きたい?
何をしたい?
何をすれば、気が紛れる?
千鶴だったらやっぱり……。
「……俺、久しぶりだし、遊園地は?」
千鶴は諦めたように小さくため息をついた。
どうやら、俺の勘は当たっていたみたいだ。