【短編】君を想う
遊園地に着くと、さっきとは打って変わって千鶴のテンションが上がった。
やっぱり、ここにしてよかった。
俺の方を向きながら歩く千鶴が危なっかしくて、思わず手を差し出した。
周りにいるカップルに触発された……つもりはないんだけど、もしかしたらそうだったのかもしれない。
「子供じゃないし……」
そう言いながらも素直に俺の手を取ってくれた。
手を繋いだまま、なぜか千鶴は俺を見上げた。
「ん?」
「なんでもないよ」
聞いてみたけど、答えてはくれなくて。
逆にどれに乗るかと聞かれたから、その時視界に入ったジェットコースターを指さした。
俺と千鶴の“疑似デート”の始まり──……。
時間がない中でも、メインと言える乗り物には乗ったかも。
もうそろそろ出ようかと思った時、千鶴に引っ張られて観覧車に乗った。
ゴンドラに乗り込む時、係の女の子が言った言葉に、千鶴は困ったように笑う。
まぁ、彼氏じゃないしね、実際。
小さなゴンドラ。
わざわざ隣同士で座ることもないと思って、繋いだ手を離して向かい合わせに座った。