【短編】君を想う
今日はほとんど繋いだままだった手。


触れていなくても感触が残っているようで、思わず手のひらを見つめてしまう。


当然だけど、昔よりは大きくなった手。

でもやっぱり女の手で小さい。


自分でこの手を守ってやりたい。

包んでやりたいって思う反面。

やっぱり俺じゃ役不足だよな、って思うこともあって。


千鶴の気持ちはいつも、智明に向いてるってわかってるから。




「修ちゃん見て!」


千鶴の声に考えることを止め、言われるままに指さす方向を見ようと、千鶴の方に体を寄せたら、ゴンドラが小さく揺れた。


「おっと、ごめん」

「う、ううん」


千鶴はちょっとだけ顔を赤くしながら、首を左右に振る。



「智明のこと好きだって、やっと自覚したんだろ?」

さっきと同じように向かい合わせに座り直し、千鶴の目を真っ直ぐ見据えた。


「どうして……?」

「千鶴はずっと、智明を見てただろ?」


そう言ってやると、困ったように視線を泳がせた。


それから、

「中学の時、好きな人いたし……」

と言い訳めいたことを言う。

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