【短編】君を想う
…………はい?


いきなり飛び出した“好きな人”。


それって、もしかして……。


陸上部の林先輩の名前を上げると、千鶴は驚いたように目を見開いた。


や、俺に直接カッコイイって言ってたし。


「でもあれってさ、好きっていうか……憧れってカンジじゃなかった?」

「憧れ……」

「千鶴はさ、子供の頃から好きだったんだよ。智明のこと」


何か考え込んでいる千鶴に、俺はダメ押しの一言を浴びせる。


自覚して、何か行動を起こせばいい。

俺はそれを望んでいた。


だけど、千鶴が引っかかってるのは、やっぱり昨日見た女の存在。


「だって邪魔できないし……したくない」

優しい千鶴はそう言って俯いた。


……泣き出してしまいそうなのか、膝に置かれた手をぎゅっと握りしめている。




「俺にしとく?」

思わず口をついて出た言葉。


言った後、驚いて顔を上げた千鶴以上に、自分が驚いていた。

こんなこと、言うつもりなかったんだけどな。




「俺だったら千鶴を泣かせない。悲しい顔はさせない」

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