【短編】君を想う
思わぬ遭遇
地元に戻って来ても、いまだ繋がれた手に千鶴は少し動揺してるみたいだけど。
“幼なじみのお隣さん”は変わらない。
今まで通り頼ってくれていいことを伝えたら、千鶴は少し困った顔をしたけど頷いてくれた。
晩飯を食いに、前に来たことのある駅前から少し離れたイタリアンに入った。
たまにはこんな雰囲気の店もいいだろう。
だけど、それが失敗だったな。
入口にいた店員に2人だと告げた時、ふと奥の席のカップルが視界に入った。
こちらに背を向けた女と、男は──智明。
それに気づいた千鶴は、なんて表現したらいいかわからない表情をしていた。
しまった……。
しかも智明のヤツ、俺と千鶴の手をじっと見てるし。
「店変えよう」
早口でそれだけ言って、智明を一瞥してそそくさと店を出た。
……タイミングの悪いヤツ。