【短編】君を想う
「ただいまー」


多分裏口だろう、カウンターの奥から紙袋を持った女性が顔を覗かせた。


「おかえり」


頬を少しだけ緩ませると、その男性は紙袋を受け取って、カウンターの端で整理し始めた。


「いらっしゃいま……」


カウンターにいた俺に挨拶しようとした、その女性の声が途中で止まった。


……あ。


俺もその人を見て、思わず目を見開いた。



「あなた……」

そこにいるのは”図書館の桜井さん”だった。



「どう、も……」

まさか、彼女と図書館以外で会うなんて思ってなかったから、うまく言葉が出てこない。



「ダメじゃない、こんなところに来ちゃ……」

“高校生が”って意味だろう。



「あ、いや……。入っていい店か迷ったんですけど」

それを聞いた彼女は、カウンターの端にいるさっきの男性に声を掛けた。



「叔父さん、やっぱり看板出した方がいいんじゃない?」

「おじ……さん?」


「ここ、母の弟のお店でね。たまに手伝ってるの。……明るい時間はコーヒーなんかも出してるけど、一応、バーよ」

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