【短編】君を想う
整理が終わったのか“叔父さん”と呼ばれた男性が戻って来た。


「なんだ、知り合いか?」

「え、ま、まぁ……」

桜井さんが口籠る。


知り合いと言えば知り合いだけど……。


「あ、和泉、修平です」


そう言えば、彼女にもまだ名乗ってないことを思い出して、2人に告げるつもりで名乗った。


「柏木徹です。よろしく」

「あ、こちら……こそ」

「叔父さん、ダメよ。彼、高校生なんだから」


高校生なのか、見えないないなぁ、何て言いながらも、

「昼間来る分にはいいじゃないか」

と、口髭を蓄えた柏木さんは小さく笑った。



「春奈こそ、どういう知り合いなんだ?」

“高校生と”って意味だろう。


「この前、ぶちまけちゃった本を拾ってくれたの」

「それは災難だったね」

柏木さんはそう言って口元を上げた。


「あっ、いや、あれは俺も悪かったんで……」


その時、店の奥の方から呼ぶ声がした。


「いいよ。俺が行く」



カウンターを出ようとした桜井さんを制止し、柏木さんがカウンターを出た。

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