【短編】君を想う
からかわれている千鶴がおかしくて、思わず笑ってしまう。


食事も終わってコーヒーを飲んでいたら、千鶴の視線を感じた。

どうして笑われているのか、さっぱりわかっていない顔をしている。


千鶴が寝てしまった後、智明がバイト先にレンタル延長の電話をしていた話をしたら、いきなり抱きつかれた。



「おっと」

コーヒーをこぼさないように千鶴を受け止める。

……簡単に抱きつかれるあたり、俺ってやっぱり……。



同じ中学に通ってても別行動だった俺たちだけど、高校に入って、朝食を一緒にとるようになったからか、自然と一緒に登校するようになっていた。


千鶴を挟んで立つのが決まったパターン。

満員電車だし、守ってやらないとな……と思っているのは俺だけだろうか?


DVDを預かっているから家に来るように言うと、勉強も教えてと言われた。

まぁ、そんなものいつでも教えてやるけど。


千鶴の隣で智明は、つり革につかまって半分寝ていた。

……器用なヤツ。



その時、急に電車が大きく揺れた。

突然のことで踏ん張りが利かなかったのか、千鶴の体が大きく傾いた。



「ちづ!」

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