【短編】君を想う
帰りに地元で待ち合わせしたり、俺の家で勉強したりしながら過ごした1週間。
智明はずっと朝食の席にいなかった。
俺もあの日から図書館へは行ってない。
俺が千鶴たちの学校へ行った翌日、質問攻めにあって大変だったとなぜか俺がキレられた。
そんな時、美佳さんが少し寂しそうな顔で言ったんだ。
「ちーちゃんがうちのお嫁さんに来てくれたらうれしいのに」
って。
実質3人の母親と言っても過言ではない美佳さん。
俺たちの間にある微妙な空気を感じ取ってるんだろう。
それに、直接話したわけじゃないけど、美佳さんは多分それぞれの気持ちに気づいてる。
それは母親の勘、ってよりも女の勘なんだろうな。
ふいに、あの店のコーヒーの味を思い出した。
今の時間は彼女は図書館のはず。
……少し悩んで、でも俺はまたあの店に行くことにした。
「いらっしゃい」
昼間でも上の方に小さな窓しかない店内は薄暗かった。
「おぉ、和泉くん、だっけ」
「こんにちは」
店内に客は数えるくらいしかいなくて静かだった。