【短編】君を想う
コーヒーを注文して、カウンターに腰を下ろす。

次第にコーヒーのいい香りがして、俺は思わずそれを吸い込んだ。




「お待たせ」

カップにもこだわっているのか、前回とは違うカップ。


「いただきます」

ん、やっぱりうまい。



「和泉くん」

「はい?」

ふいに、柏木さんに名前を呼ばれた。



「最近、図書館には行ってるかい?」

「え、あ……いえ」


どうしたんだろう。


「春奈、元気がないように見えてね」

「え……」

「笑ってるんだけど、無理して笑ってるっていうか……。図書館でもそんな感じなのか、君に聞いてみたかったんだけどね」


柏木さんはそう言って口元を小さく緩めた。


その顔もまた、どこか寂しそうだった。



その時、店の電話が鳴った。


「ちょっと失礼」

そう言って柏木さんはカウンターの端にある電話に向かった。



コーヒーも飲んでしまったし、ちょっと気になったから図書館にでも行ってみようかと思った時。


「大丈夫なのか?」

なんて心配する言葉が聞こえて、無意識にそっちに意識が行ってしまう。

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